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薬師岳→立山室堂縦走(8)

 スゴ乗越小屋は小さいが正面からスゴノ頭、越中沢岳と言うふたつのピークを望めるすばらしいロケーションを持っているのだが、それを楽しむ余裕もない。時期が時期なら楽しい一泊になることは間違いなのだが・・・。
 ベンチはもちろんもたれかかる場所は全部先に到着した人に占領されている。このまま、4時間近くは外で待たないといけない。せめて体を拭きたいとも思ったが、そんな場所もない。天気が良いのが救いだが、だんだん体も冷えてくる。ウインドヤッケや合羽を出して来ている人もいる。小屋の乾燥室もつかえないので、タオルやシャツを木の枝に架けている人もいる。当然のごとく、小屋の前はそこかしこでビールで一杯やっている人たちもいる。
 大きなベンチが空いたので、そこに移動して、横になる。
 「すみません。体伸ばさせてもらいます」
 と、声をかけると、直ぐに親しくなった。男性5人のパーティー私より年長の方々に30台の人がひとり。関東弁と関西弁の混じったユニークなパーティー。会社の元同僚同士と言うことだそうだ。ルートは私の逆。明日は薬師を超えて太郎小屋へ行くと言う。
 なんでも、インターネットで小屋の予約をしておいたが、小屋には予約が入っていなかったという。(ちなみに私は予約の電話をしたが、『予約は要りません』と言われた)で、この小屋の定員が約40のところ。登山ツアーの団体予約だけで80人になっていたとのこと。つまり、既に布団1枚に2名と言うことか。それなら、インターネットで告知するとか予約段階で「それでも良いですか」と言うべきだと怒っておられる。全くその通りで、私のような単独で身軽なものはコースを変更しても良かったのだ。それに、ツアーとして来たお客さんはツアー会社に文句もでるだろう。(現実、かなりクレームが出ていた模様)ここでざっと計算。食堂は24名収容だそうで、私が7番目。と言うことは150名近く(実際は160名)を超えていたらしいがこの小屋に入るということになる。
 「『食堂で寝ろ』と言われましたが、食堂に入りきります?」
 不安で私は5人組さんに尋ねる。 
 「無理だろね。まあ、とにかく中に入らないと、わからんね」
 とのこと。
 ようやく夕食が始まる。食堂は一階の窓側。私らは『マッチ売りの少女』状態だ。食事は問答無用で30分交代で小屋内の人からスタート。5人組さんは6番目ということで、
 「まあ、家ではそれくらいの時間でたべてるからなあ」
 と自嘲的に言う。
 やがて小屋の外で待つ人の番になった。ハンドスピカーで「*番目の人どうぞ!」と呼び込みがはいる。既に日はとっぷり暮れた。星座の話しもするが、基礎知識がないので、盛り上がらない。通り過ぎる人工衛星を数えたりする。
 ようやく食事も終了。食べ終わると、再び小屋の外に出る。食堂では従業員の方のまなかいがはじまる。
 9時ようやく屋外待機組が小屋に入り、従業員をほとんど無視して宿泊の段取りを始める。食堂のテーブルが邪魔。あっと言う間に窓から小屋の外に持ち出される。布団をどんどん敷き始めるが、布団自体がたりない。従業員に聞いただれかが、屋根裏から毛布を下ろしてくる。バケツリレーならぬ毛布リレーだ。
 足と頭を互い違いにして体を密着させても、案の定食堂では収容しきれない。
 「こっちで寝ますわ!」
 とさっきまで屋根裏で毛布を下ろしていた人の声がする。
 「キッチンで寝るか」と私が考えていたところ。5人組の人が手招きする。玄関をあがってすぐの板の間にスペースがある。そこで寝ましょうというのだ。足は土間に出るが、結構なスペースがある。毛布を引いて、直ぐに準備完了。ところが、5人組さんのひとりがどうしてもスペースがない。
 「テーブル持って来てベッドにしたら?」
 半ば冗談で言うと、本当にテーブルを玄関に持ち込んで、即席ベッドにしてしまった。 「おう!俺が一番広いぜ」
 と屈託ない。
 まあ、とにかく5時間も寝れない状況。とにかくさっさと目をつぶる。つま先が冷たいが、ひざを折るとなんとかなりそうだ。キッチンでは早速明日の朝食(ほとんどが朝食弁当を申し込んだ。それはそうだろう。夕食のペースでいけば、出発が何時になるかわからない)フロント(?)カウンターのそばなので電灯もつきっぱなしだ。しかし、寝るしかない。と、たちまちひとり向こうからでかいイビキがはじまる。みんな外で結構飲んでいたからなあ・・・。しかし、タフな人もいるものだ。
 「明日(五色山荘)もこんな状態なら、きついなあ」と思う。「早く到着してさっさと昼寝するか」と考える。「余裕があれば室堂まで行ってしまえるかも」とも考えつつ、少し眠る。

 ところで、就眠前に客の不満が爆発した。予約の取り方の問題についてだ。小屋側は「小屋には緊急避難のこともあり、宿泊は断れない」と言う。客サイドは「すでにツアーなどで満員をオーバーしていたのだから、少なくとも予約段階で状況を説明するべきだ。この状態では返って翌日の事故を招きかねない」と主張した。
 全くその通りだと思う。結局、小屋は食堂などの就眠客には1,000円を返金することになった。
 
by garyoan | 2006-09-16 09:29 | 私はやせる
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