格調高い文

 最近、岩倉使節団について調べている。と言っても、毎度のモルモン教の歴史を調べる関連でだ。おそらく日本人で初めてユタのソルトレークを訪問し、記録を残したのは岩倉使節団の面々とその公式記録者だろう。彼らの記録には資料としての価値が高い。
 使節団研究書も読んでいる。「岩倉使節団『米欧回覧実記』」(田中彰:岩波現代文庫)だが、大変面白い。本来の目的を忘れて、読みふけってしまっている。
 その中で使節団が出発前の宴席で太政大臣三条実美から受けた送別の辞が紹介されている。

  「外国ノ交際ハ国ノ安危二関シ、使節ノ能否ハ国ノ栄辱(えいじよ
 く)ニ係ル。今ヤ大政維新、海外各国卜並立ヲ図ル時二方(あた
 )リ、使命ヲ絶域万里二奉ズ。外交・内治、前途ノ大業其成其否
 、実ニ此挙ニ在り。豈(あに)大任ニアラズヤ。大使天然ノ英資
 ヲ抱キ、中興ノ元勲タリ。所属諸卿皆国家ノ柱石、而(しこうし
 )テ所率ノ官員、亦是(またこれ)一時ノ俊秀、各欽旨(きんし
 )ヲ奉ジ、同心協力、以テ其職ヲ尽ス。我其(われその)必ズ奏
 功ノ遠カラザルヲ知ル。
 行ケヤ海ニ火輪ヲ転ジ、陸ニ汽車ヲ輾(めぐ)ラシ、万里馳駆(ち
 く)、英名ヲ四方ニ宣揚シ、無恙(つつがなき)帰朝ヲ祈ル。」


 筆者も述べているが、大変格調高い美文である。単に力強く美しいだけでなく、やはり文明開化の持つ、高揚したムードがビビットに伝わって来る。やはり時代が書かせたものなのだろう。
 しかし、比べるまでもないが、昨今のわが国政治家の言葉の貧困なことはなんであろうか。維新ほどではないかもしれないが、時代が逼迫している事は間違いない。なのに、あいもかわらず、いや、いよいよますます言葉が軽くなる。結局は言葉の発し手である政治家の時代認識の差であろう。時代が分かれば、現代政治家も良い文章もひとつが書かせて貰えるだろう。
by garyoan | 2005-02-19 23:02 | 奇譚異譚歴史譚
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