「なんかこんな人が来てますよ」
受付を兼ねた総務の女性社員が名刺を持ってきた。「裁判官」とか「判事」とか書いてある。「なんのこっちゃ?」対応に出ると、会社の輸入品(ブランド品)を調べたいと言う。居並ぶ弁護士たちも次々と名刺を差し出す。後の方で名刺を出さずに黙って厳しい目でこちらを見ているのは正規輸入元の会社の社員さんだろう。 「既に通知済みですのでご承知ですね?」と言う。聞いてない。こうしたことは専務の担当だが、朝から外出している。なんと社長以下常務まで全員外出している。文書を受け取っているはずの幹部連中は黙って遁走しているのだ。私に任せるなら、任せるで事前に話しておいて欲しかった。 証拠を集めるために事務所の一角か部屋を借りたいと言う。総務に話して急遽会議室を空けてもらう。コピー機が持ち込まれ、私は裁判官から協力をするように強く求められた。会社が販売する「並行輸入」の衣料品の写真を見せられ、現在の在庫と販売数、上がった利益のわかる資料を提供しろといわれた。 通常業務は全てストップ私も部下も対応に追われる。これを出すと次はこれと容赦ない。在庫の台帳を見ていた正規輸入元さんが、小さく声を挙げた。 「これも入れてるんか?!」 弁護士が来て、なにやら話し、それからその商品のデータの提供も求められた。 叩けば埃がでるとは言うが、叩くまでもなく近寄れば埃まみれの体だ。 私の方も幹部の態度が面白くないので、かなり積極的に書類を提供した。もとより怪しげな「平行輸入品」には反発もあった。 夕方には一同は帰って行った。その日予定の仕事は全く出来なかった。 それからしばらくして専務が帰社。報告に行くと 「あんたには言ってなかったかなあ」 とのこと。めちゃくちゃ腹が立った。 幸い裁判所には呼ばれなかったが、しばらくして、当該商品を破棄するように命令が来た。その破棄の指揮をしたのも私たちだった。
by garyoan
| 2005-12-24 10:44
| 仕事の思い出
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