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仕事の思い出(3) 「密輸」

 「ホテル行って、取って来ましたよ」
堺にある店の責任者から、電話が入る。
その店はアジアの某国の航空会社のクルーが宿泊するホテルの近くにある。クルーは関空行き便に乗務する時、ある人物から荷物を渡される。その荷物はクルーの個人的なものとして、日本に持ち込まれる。ホテルに到着したクルーは渡された電話番号に電話を架けると、堺の店に繋がる。
 「**さんから、預かっています」
堺の店の責任者はホテルに出向き、その荷物を受け取って来て、冒頭の私への電話となるわけだ。
私は社内便で荷物を本社に送るように指示する。乱雑にしかし厳重に厚手の紙に放送された荷物が到着すると、会議室に同僚部下を集めて荷物を開封する。中身はイタリアのブランドV社のネクタイである。それがどうしてアジアの国から入ってくるかは、読者の想像のとおりである。
柄に従って分類し、全く意味のない検品をし、店舗に振り分け、発送する。当然、信じられないような安い値段である。値段を見ればだれも本物とは思わないだろう。それが良心の呵責を耐える言い訳になる。

単に商品がパチものと言うだけではない。航空会社のクルーの荷物を悪用した立派な密輸である。これを現場で手配していた人物は現地では有名な日本人だという。
私が部署を離れてしばらくして、このブランドは店頭に並ばなくなった。それがどうしてかは詳しくは分からない。しかし、この会社は正規代理店、ブランドの在邦オフィスなどからマークされていたことは間違いない。

次回はイタリアのブランドPについて書く予定。
by garyoan | 2005-12-26 22:20 | 仕事の思い出
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